トリわけ驚いた、基地のおはなし

2018年6月19日

ある日のこと。

トントンと背中を叩かれ、振り返ると、そこには満面の笑みの女の子。
「ねえねえ、すごいのができたから、ちょっと見に来ない?」

手を引っ張られてついていった先には、板を組み合わせたうえから布を巻きつけた、テントのような基地。中では、すでに2人、ごろごろしながらおしゃべりを楽しんでいる。なかなか快適そうだ。
なるほど、これを自慢したくて、しんちゃんを呼んだのね。たしかに誰かに見せたくなる気持ち、わかる!
「これで、鳥つかまるかな~?」
えっ、トリ? トリってあの鳥? どういうこと?

聞いてみると、どうやらもともと彼女たちは、鳥をつかまえようと罠をつくっていたらしい。
できてみると、罠を見張るための場所が必要だ、となった。でも、ただ見張っているだけでは、つまらない。そこで、ここに基地をつくり、のんびりしながら気長に待つことにしたそうだ。

「鳥に見つからないように、この場所にしたんだ」
「あそこの穴からのぞくと、罠が見えるんだよ!ばっちり!」
穴をのぞかせてもらうと、つっかい棒をしたバケツの下に、木の実がおかれている。バケツの取っ手からひもが伸びて、基地の中まで続いていた。
「はやく鳥つかまらないかな~! じゃ!」
怒涛の勢いで語り終えると、颯爽とわが家に戻っていく彼女。
鳥で、罠からの、基地か~~。子どもの発想、あそびの展開は、いつだって大人の想像の斜め上を行く。僕は少し、くらっとしながらそこに立っていた。

これからは梅雨が近づくにつれ、蒸し暑くじめじめした気候に変わっていく。
そんな季節にちょっと疲れたら、子ども達の基地におじゃまさせてもらうことにしよう。
そうすれば休憩にもなるし、罠のその後の面白い話も聞けるに違いない。
これぞまさしく、一石二鳥?

しんちゃん

※こどもりもりvol.20(2018年6月発行)に掲載のコラムを、編集のうえ転載しています。

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