「やってみる」のきっかけは……

2019年9月5日


夏休みのある日。土にあいた大きな穴に水を入れると、泥水が溶かしチョコレートみたいにツヤツヤ輝く。そこに入ってあそんでいる幼児親子がいた。

ちょっと離れた木陰からその様子をじーっと見つめる小学3年生男子。こどもの森は初めてで、ドキドキしている様子。やってみたいのかなー、でも泥に入るって思い切りがいるよね……もーりーもなんとなく気にかけていると、彼に気がついた幼児のお母さんが、「爪先だけ入れてみる? 気持ちいいよ」と声をかけた。

小学生はそれをきっかけに、躊躇しながらもふちに座り、靴下を脱ぎ足を入れた。感触が良かったのか「おーーー!」と満面の笑み。緊張がほぐれるにつれ、足首までついた泥を見て「靴下みたい」、「こんなドロドロは初めてだ」と口数が多くなり、立ち上がって穴の中で足踏みをはじめた。トロトロとした泥水の感触は、くすぐったいような気持ちよいような、もっと触りたくなる不思議な魔力がある。やがて、座って泥水につかる、穴に飛び込む、泥パックみたいに体に塗るなどが始まり、あっという間に全身ドロドロになった。

もーりーが「ドロドロだね!」と声をかけると、いきいきした顔で「うん、楽しい!」と叫ぶ。木陰で様子を見ていたときの不安そうな表情が嘘みたいだ。

あのあそび面白そうだな、やりたいな、でも勇気が出ない、って時もある。その子のペースで始められるのが一番だけど、誰かの誘いやちょっとした声かけに背中を押されることも、やっぱりあると思う。それは友達でも、家族でも、初めて会う人でもいい。

こどもの森では、子どもも大人も関係なく、居合わせた人同士が話したり一緒にあそび始めたりする光景が当たり前にある。だから、知らず知らずのうちにお互いが影響を与え合っている。知らん顔ですれ違うだけでは起こらない化学反応が、あちこちで起こる。それが素敵だなーと、つくづく思うのだ。

この秋には、新しいプロジェクトも始まる。知らなかった「面白い!」に出会うきっかけが、もっともっとたくさんになる。そんなこどもの森を目指している。

もーりー

※こどもりもりvol.27(2019年9月発行)に掲載のコラムを、編集のうえ転載しています。

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